2006年5月11日木曜日

追われる夢

夢の実例~他誌寄稿2006年5月

「追われる夢」は目覚めが悪いものです。しかし「幽霊の正体見たり枯れ尾花」もし繰り返し見るなら、次回は逃げるのをやめてみましょう。そう思って眠るだけで、不思議と夢の中身が変わります。貴方の覚悟に、夢も応えてくれます。

Nさん(40歳・男性)の夢
幼稚園から小学校低学年頃まで何度も見た夢です。場面はその都度違いますが、いつも雪女が追いかけてきて、僕は走って逃げます。でも体は思うように動かずなかなか進めません。怖くて、はっと眼が覚めます。いつも汗をびっしょりかいていました。

Tさん(37歳・男性)
何者かに追われ、追い詰められる夢です。最初は電車の中にいます。そこから怪物のような何かが迫ってきて、いつの間にか舞台は変わって気がつくと断崖絶壁に追い詰められています。なぜ追われるのか、なにが追ってくるのか、明確にはわかりません。夢は大抵、追い詰められたところで終わります。

夢解き

子供の頃は、怖い夢をたくさん見ます。毎日初めてのことだらけで、昼間未消化だった思いを夢の中で発散し、整理するからだそうです。又、寝ている間も肉体は成長します。その違和感や、大人になる恐れが夢になる事もあるようです。又、夢で逃げるのは親からの自立の意味もあり、子供時代の悪夢は、それほど心配いりません。

ただNさんの場合は当時、家庭内が複雑でした。親達の事情により緊張が多い上に、何事もゆっくりだったNさんは「早くしなさい!」と母から叱責され=雪女の「冷たい息」をかけられ、「凍りついて」いたそうです。いつも冷や汗をかいた幼いNくんは、眠りながら本当の汗をかきました。お母さんもきっと一生懸命だったのでしょうが、雪女=「怖い母性」であり、Nさんはこの夢さえ話せませんでした。

Tさんの夢は「社会というレールの上を走る電車」からはじまります。もしTさんが、締め切りやノルマに追われていたなら、それが迫り、道がない=「時間がない、早く!」という夢にも取れます。しかし思い当たる節がないなら「正体が知れないのもの」=Tさんがはっきり認識できずにいる心の闇か、「認めてはいけない」と「拒否し続けている思い」が追ってくる夢でしょう。

例えば「組織や世間に沿うのが善」と決めていると、「独自性を発揮したい」という思いが沸いても、「自分には許してはいけないこと=悪」と退けて、現状を守ろうとすることがあります。時々「電車から降りて、自由に歩くのもいい」という「間の選択」が出来れば、「思い」は怪物にまではなりません。しかし現実で葛藤から逃げると、その分、夢では抑圧された思いの方が追いかけてきます。

崖の先に道はなく、今まで通りには進めません。自分の影の正体を確かめて対決するか、飛び降りて0から始めるか、どちらかです。結末がないまま目を覚ますのは「起きて考えて!」というメッセージです。 Tさんのような夢は、責任感が強すぎたり、感情を切り捨てやすい人、変化を恐れる時等に現れやすいようです。少し肩の力を抜き、自分を見直したい時ですから、身近な人に夢を話せるといいでしょう。聞く側も解釈より「それは怖かったね」と共感できれば充分です。

マレーシアの先住民族セノイは、毎朝、家族で前夜の夢を話し合うそうです。子供でも口下手な人でも、夢は雄弁です。日本では忙しい朝でしょうが、自由な気持ちで夢を語って、大切な人との理解や絆が深める時間が持てれば素敵なことだと思います。

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