夢の実例~他誌寄稿2006年5月
Fさん(35歳・男性)の夢
道を歩いている。少し脇を歩いてみると、そこにあったどぶ(側溝)に落ちる。はまっただけかと思ったら、底がなくてすごい速さで落下する。周りは暗く、落ちているのか止まっているかも解からなくなり、怖さで起き上がって眼が覚めた。
Hさん(39歳・女性)の夢
高いビルの屋上にいる。スーツ姿の女性たちが隣のビルに続く細い板を渡って行く。私も急かされて進んだが、足の踏み場を迷い、踏み外して落ちた。うつぶせに寝る形で落下した。でもすぐに、夢だから飛べばいいと思い出した。地面が迫る直前で成功し、低空飛行をしてから着地した。夢解き
Fさんはこの頃、新しい仕事に挑戦していました。生活も不安定、周りに迷惑も掛け、次第に、本当にしたいことかさえも解からなくなっていました。道(=人生の本道)から、ちょっと脇を歩いたら(=仕事を変えたら)、側溝に足を踏み外して落下した(=人生の転落と深い闇に落ちてしまった)。夢の通り、進んでいるのか後退なのかもわからない、取り返しがつかない事態ではないかという恐怖が形になった夢です。Fさんは現状に不安を持っていましたが、引き返すのは恥ずかしいことだと虚勢を張り、現実や本当の感情から目をそらして走り続けていました。 しかし、体感させられた目覚める前の「恐怖」はぬぐいようがありません。 誰が強要したわけでもない、自分が生み出したそれを、この期に及んで無視することは難しいものです。そのため、「立ち止まって、直面して!」というメッセージの夢に、感情はつきものです。Fさんもやっと直面する気になりました。その後、むしろ現実に触れたお陰で、具体的対応策に気づき、仕事は起動にのりました。
Hさんの夢は、落下だけでなく「飛ぶ」や「夢のコントロール」の意味が加わりますが、詳細はまた別に譲るとして、Hさんは意思を使い、夢の途中で恐怖を克服しました。夢の頃、Hさんは職場の組織再編の只中にいました。スーツの女性たちは同僚であり、自分の理想像だったのかもしれません。
彼女たちは、別の高いビル=別のハイレベルな仕事、に移っていきます。けれどHさんには決心がつきません。現実でも同じく、皆に習って新しい場所へ渡ろうとしましたが、本当は新しい仕事に自信がなく、昇進できても荷が重く、かえってボロが出るかもと不安だったそうです。
夢は本心を確認させてくれたと同時に、落ちた所までを疑似体験させてくれました。「落ちたらまた飛べばいい」それがHさんの結論でした。更に、「ビルの屋上=頭で考えるだけの状態より、着地した=地に足をつけて体感してみよう」という、気持ちに切り替わり、すっきりしたそうです。
落ちる夢を見た時は、まず、無理をしていないかを振り返ってみるとよいでしょう。特に、Fさんのように、がばっと起き上がって目を覚ましたり、叫びながら目覚めるような時は、「起きた貴方が続きを考えなさい」というメッセージの場合が多いようです。近頃の現実での出来事とも照らし合わせて考えてみてください。
又、余談ですが、もしFさんが女性問題で悩んでいたら、夢の意味は変わってきます。「溝」や「深い穴」には女性の意味もあるので、「彼女との関係に呑み込まれて自分を失うことを恐れている夢」だったかもしれません。自分で夢を考える時には、夢辞典の意味を切り張りにあてはめずに「自分にとってしっくりくる感じ」を大切に探ってみてください。
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