2012年3月15日木曜日

靴がない夢

夢の実例~夢主 Iさん(34歳・女性)

Iさんは、靴がない夢を1番に2本見ました。

1.趣味の仲間との集まりに参加する。場所は小さな集会所。靴を脱いで上がる。会が終り、帰る人もいれば、残っている人もいる。私も帰ろうと玄関に行くと、まだ残っている人の靴がびっしり並んでいる。けれどその中に私の靴がない。誰かが私の靴を履いて帰っているのだと思う。

その人の靴を替わり履いて帰らなくては履く靴がないのだが、それがどれなのかも解からない。私は引き返し、主催者を探し、「靴を履いて帰った人は、私の物なのに間違えているから、どうにかして欲しい」と訴えた。

2.座敷タイプの居酒屋にいる。私が私でありながら、少し男性っぽい感じ。とても女らしい、やわらかな印象の女性を同伴している。外に出ようとすると、2人ともの靴がないので、店の人に尋ねる。

店員は友達でもあるようで、男性だがおねえ系のゲイの人。彼が「ここにあるわよ」と靴を出してくれた。

同伴の女性は「よかった、これ」と喜ぶが、私の靴は私のものではない。まっさらな白いシリコンのような素材の、綺麗で丈夫そうなズック。一部に濃い藍のラインが、凛とした感じで入っている。これはこれでとても美しいと思うが、私が履いていたものではないので「違うから探して」と言う。

すると彼は「そうなの?でも、もう、これでいいんじゃない?」と言う。私は「私のは茶色のサボのようなものだし、第一、白は汚れるから絶対履かないから」と答えた。


夢解き

靴は女性らしさや、自分の社会的地位、自分が属する世界でどのようなポジションであるかなどを象徴します。靴がない夢は、それらが失われているように感じたり、模索している時に現われやすいものです。

夢の前日、Iさんは、夢にも出てきた趣味のサークルで、少し考えること出来事があったそうです。サークルのリーダーが、今まではIさんを頼りにしていた物事を、別の人に相談していることを知ったそうです。

Iさんは「それはそれで構わない」と思ったものの、その別の人の方法はあまり望ましいとは思わなかったので、「人選ミスだな」と思っていたそうです。

「夢の中の主催者」というのは現実のリーダーの姿ではなかったそうですが、現実のサークルのリーダーに「私の物(仕事・立場)なのに、(その人)が間違えている(入れ替えてしまった)から、どうにかしてほしい」と言いたかったのかもしれません。

しかし同時に、そんなことを考えている自分についても、あれこれ考えたそうです。

例えば、Iさんは頼まれれば引き受けますが、そうでないものには敢てお節介は焼きません。でもそれはもしかしたら「一歩踏み込めないマイナスな性格」なのかもしれない、とも考えたそうです。

良くも悪くも人の領域に入り込み、世話を焼くのは、「女性性」のなせる業です。勿論行き過ぎれば、相手を依存させて自立を阻むマイナス作用もあります。その点ではIさんは、男性性をしっかり持って、ビジネスライクに物事を処理できる人でもあります。けれどもう少し、女性性を発揮した方がよいのかと考えたのでしょう。

2つめの夢では、「やや男っぽいIさん」と「女性らしい連れ」が出てきます。

これは2人で1人=Iさんを示しているようです。Iさんは、非常に繊細な女性らしさを持っているからこそ、外では男性性を発揮し、それぞれの領域を守っています。しかしそれは行き過ぎれば「自分を守る鎧」にもなっていたのかもしれません。「このバランスは、今のままでよいのか?」と考えたから見た夢といえそうです。

男性でありながら、女性でもある「両性具有」のゲイの彼が、今後のあり方を示しているのかもしれません。彼が教えるのは「自分のものではない靴も履いて見たらどう?」ということでした。

「白い靴は汚れるから履かない」というのは「感情が左右されたり、自分が守りたい自己理想像を汚されることを嫌う」ことなのかもしれません。また、同時に白が持つ「潔癖さ」を暗示している用にも見えます。

でも、始めから拒絶するのではなく、そんなに身構えずとも「いろいろな靴(社会の中での人との関わり方や立場)を試してみてもいいのではないか」と気づき始めているのかもしれません。

純粋さや真実を表す「白」は、汚されやすいかもしれませんが、その靴には「凛とした藍のライン」があります。藍色や「精神性や神仏の守護」などの意味もあります。「守られている自分」「そんなに弱くない自分」を信頼して、「もう少し人に踏み込んでみても大丈夫。出来るよ」と教えているようです。

同じ夜に見る夢は、内容が違っていても同じモチーフが多いものです。しかしIさんのように、状況だけが違って、靴を探すという同じ象徴を続けて見るのは、私が見てきた限りは、案外多くはないように思います。それだけ一生懸命、心と頭を整理していたのでしょう。