2006年7月25日火曜日

遅刻する夢

夢の実例~2006年7月他誌寄稿分より

遅刻の夢は、日ごろから遅れない人や、きちんと備える人に多く見受けられます。むしろ「遅れる夢で起きたら、寝坊していた」というケースは少ないと思います。実際に「遅刻だ!」と飛び起き、本当に遅れていたら、夢を記憶しているどころではないので忘れているのかもしれませんが。

Iさん(67歳・男性・無職)の夢
すでに退職し、今は趣味に熱中していますが、時々、現役時代の自分が遅刻をする夢を見ます。仕事先に向かいますが、電車を間違えたり、忘れ物を取りに戻ったり、なかなか着きません。かつての大変だったプロジェクトをまだ片付けていて、それに遅れる夢だったこともあります。目覚めた時には「夢でよかった。今は時間に追われなくなって幸せ」としみじみかみしめます。

Oさん(40歳・女性・司会業)の夢
大きな仕事を引き受けた時に見た夢です。
仕事の現場に向かっている。時計を見ると、開始時間まであと10分になっている。絶対に間に合わない。近道したり、電話で連絡しようとするが、道には迷うし電話も繋がらない。おまけに普段着なので、これでは仕事に行けない。時計を見ると、ついに開始の時間は過ぎていた。私は結構パニック状態。

夢解き

Iさんには「やりたい事に熱中できる時間は、どれくらい残されているのか」という不安があるようです。今を生きることに意欲的なだけに、「もっと若ければ、こうできたのに」という思いもあるのかもしれません。

「衰え」や「死」というゴールに「間に合いたくない」、堂々巡りできつくても、「現役時代のように動き続けられる自分のままでいたい」という思いが「遅刻」として現れています。

また、苦しかった時を追体験するのは「今は当時とは違う」と確認するためです。「今」への感謝の気持ちを繰り返し実感することで、少しずつ人生への納得度合いを深め、新しいペースを作っている最中なのかもしれません。

一方、Oさんの「大切な仕事」は、まずは「遅刻厳禁」です。もちろん「ちゃんとやり遂げなくてはならない」のですが、初めての大きな仕事で、不安で一杯です。「道には迷うし」=実力不足から、取り残される心配もあったのかもしれません。

気にしている「時計」や「時刻」は、正確に刻むもの=「完璧主義」の意味もあり、自分へ要求の高さからの緊張もありそうです。 ただ、この焦りや不安を夢で体感したことで、冷静さを取り戻せました。自分の心の状態を把握させることがこの夢の仕事だったようです。

追われる夢の回で「自分が追いたいものに追われることがある」とご紹介しましたが、「遅れる夢」にも似たところがあります。夢では「たどり着こうと必死」でも、実は「行きたくないのが本音」という場合です。現実ではあまり意識されていなくても、無意識では「出来れば避けたいこと」があるのかもしれません。

でも、夢で遅れたからといって「現実の課題や問題が失敗するのではないか」と心配する必要はありません。「やりたいのだけれど、腰が引ける」ということもあるでしょう。しかし、もう一人のアナタが「自信をもって、すぐにできることから準備を始めて!」と依頼をしていると、とらえてみてください。

2006年7月15日土曜日

トイレの夢

夢の実例~2006年7月他誌寄稿分より

琉球のトイレには、フールヌカミと呼ばれる神様がいます。外でついたよくないものを取り除いてくれたり、なくし物をさがしてくれるそうです。夢の中のトイレも、無意識に取り込んだ物を整理し、心身両面の大切なものを取り戻す仕事をしてくれます。トイレは、いつもきれいにしておきたいですね。

Mさん(37歳・女性)の夢
たくさん個室が並ぶ外出先のトイレ。満員ではなさそうだが、なかなか入れない。やっと入ったが、中はとても汚い。さらに便器から水や汚い何かが溢れてくる。気持ちが悪いので、用を足さずに出た。

Yさん(46歳・女性)の夢
実家のトイレ(戸外)に行きます。母屋を出て廊下を通りトイレに入ります。便器に座ると、得体の知れない何かが入って来ます。それが怖くてすぐに部屋に戻ります。現実でも子供時時代は、特に夜のトイレが怖く、今でも、トイレにゆっくり入るのは苦手です。

夢解き Mさんの夢では、舞台が「公的なトイレ」なので「外での出来事や対人関係」に、すっきりさせたいことがあるようです。「たくさんの個室」なのに「入れない」のは、本心では、まだ1人になり「自分と向き合いたくない」か、または「問題を人のせいにしていたかった」のかもしれません。中に入ってみても「汚い」ので、やはり自分と対峙する準備はできていなかったようです。

溢れてきた水は、Mさんの感情の「逆流」のようなものでしょう。便器は、自分の体を意味する場合もあり、自分から出てくる、感情や欲求、或いは自己理想像とは遠い姿を「気持ちが悪い」と否定したり、ありのままを認めたくなかったのかもしれません。

Yさんは、既に実家を出ています。そこで当時をよく振り返ってもらいました。するとトイレより、廊下の途中にある両親の部屋を避けたかったことや、親が争う声がトイレに伝わってくるのが嫌だったことを思い出しました。これが「どこからともなく入ってくる怖いもの」だったようです。

トイレには、プライバシーやリラックスの意味もあります。いまだに夢に現れるのは、当時の緊張が現在にも影響しているからでしょう。「ゆっくりトイレにいられず」=「リラックスして、トイレで捨ててよい感情を上手に処理できず」「すぐに自分の部屋に帰る」=「自分の殻に閉じこもったり、溜め込みすぎる」のが、Yさんの課題なのかもしれません

トイレの夢では、基本的に「きれいなトイレで用をたして、すっきりした」という印象があると、現実にもコンディションがよかったり、物事がうまく運ぶ場合が多いようです。夢主の「心の浄化処理場」ともいえるトイレが「きれい」=「きちんと機能している状態」であれば、ストレスは流され、心身ともに健全でいられる、と云うことなのかもしれません。

逆に汚いトイレは、感情や不要になった考えやストレスが整理できずにいる状態を表します。また詰まったトイレや、トイレで排泄を拒むのは、固執や執着を表すことが多いようです。しかし、古典的な夢占いでは、排泄物そのものが金銭を意味し、トイレに溢れているのは思わぬ金運の到来という説もあり、どう受け取るかは夢主次第です。

また「プライバシー」や「個性」の意味もあり、「トイレに行けなかったり、入っても落ち着けずにすぐ出てしまう」なら、リラックスできない日常や、自己表現が上手くできない状態を表す場合もあります。 ただし、「用を足せた」としても、それがトイレ以外の場所なら、自分で処理しなければならない感情等を、お門違いな所でまき散らしている心配があります。

ただ、ここでも例外があるように思うのは、男女差です。 私が伺ってきた夢の中では、トイレが登場する割合は、どちらかというと女性の方が多いようです。男性の小便器は個室ではなくオープンなので、心理的位置付けが違うのかもしれません。トイレ以外の場所で用をたした経験を持つ男性も多いので、象徴というより、尿意からの夢が目立つように思います。ともあれ、生理や本能が関わる場所なので、性差はもちろん、各人の習慣を考慮しながらたどりたい象徴です。