夢の実例~2006年7月他誌寄稿分より
Iさん(67歳・男性・無職)の夢
すでに退職し、今は趣味に熱中していますが、時々、現役時代の自分が遅刻をする夢を見ます。仕事先に向かいますが、電車を間違えたり、忘れ物を取りに戻ったり、なかなか着きません。かつての大変だったプロジェクトをまだ片付けていて、それに遅れる夢だったこともあります。目覚めた時には「夢でよかった。今は時間に追われなくなって幸せ」としみじみかみしめます。
Oさん(40歳・女性・司会業)の夢
大きな仕事を引き受けた時に見た夢です。仕事の現場に向かっている。時計を見ると、開始時間まであと10分になっている。絶対に間に合わない。近道したり、電話で連絡しようとするが、道には迷うし電話も繋がらない。おまけに普段着なので、これでは仕事に行けない。時計を見ると、ついに開始の時間は過ぎていた。私は結構パニック状態。
夢解き
Iさんには「やりたい事に熱中できる時間は、どれくらい残されているのか」という不安があるようです。今を生きることに意欲的なだけに、「もっと若ければ、こうできたのに」という思いもあるのかもしれません。「衰え」や「死」というゴールに「間に合いたくない」、堂々巡りできつくても、「現役時代のように動き続けられる自分のままでいたい」という思いが「遅刻」として現れています。
また、苦しかった時を追体験するのは「今は当時とは違う」と確認するためです。「今」への感謝の気持ちを繰り返し実感することで、少しずつ人生への納得度合いを深め、新しいペースを作っている最中なのかもしれません。
一方、Oさんの「大切な仕事」は、まずは「遅刻厳禁」です。もちろん「ちゃんとやり遂げなくてはならない」のですが、初めての大きな仕事で、不安で一杯です。「道には迷うし」=実力不足から、取り残される心配もあったのかもしれません。
気にしている「時計」や「時刻」は、正確に刻むもの=「完璧主義」の意味もあり、自分へ要求の高さからの緊張もありそうです。 ただ、この焦りや不安を夢で体感したことで、冷静さを取り戻せました。自分の心の状態を把握させることがこの夢の仕事だったようです。
追われる夢の回で「自分が追いたいものに追われることがある」とご紹介しましたが、「遅れる夢」にも似たところがあります。夢では「たどり着こうと必死」でも、実は「行きたくないのが本音」という場合です。現実ではあまり意識されていなくても、無意識では「出来れば避けたいこと」があるのかもしれません。
でも、夢で遅れたからといって「現実の課題や問題が失敗するのではないか」と心配する必要はありません。「やりたいのだけれど、腰が引ける」ということもあるでしょう。しかし、もう一人のアナタが「自信をもって、すぐにできることから準備を始めて!」と依頼をしていると、とらえてみてください。