2013年7月15日月曜日

スマートフォンを探す夢

夢の実例~夢主 (Hさん 40歳・男性)
スマートフォンのカバーを取り替えようとしてはずし、今までつけていたものを捨てる。でも次の瞬間から 、スマートフォンも見当たらなくなる。一緒に捨ててしまったのかと、慌てて探すがゴミ箱 にはない。場所は自分の部屋に似ているが、雑然としていて違う場所。

後輩のような20代前半くら いの男の子が一緒にいる。私は、彼の携帯から私のスマートフォンに電話を掛けて鳴らして欲しいと彼に頼む。すると彼は「電話代がかかるし、俺は関係ないじゃないっすか」と渋る。「電話代は私が払うから」と、面倒くさそうな彼を説得して掛けてもらう。電話は鳴っている。でも自分の体からなっているように聞こえる。服のポケットなどを探すが、どこにもない。

場面は古い日本家屋に変り、今度はそこで探している。酷く散らかった部屋。 その家に住む女性が現れる。上品な女性で、探すのを手伝ってくれる。

つめえりの学生服が壁からぶら下っていて、そのポケットも探す。その中には自分がいつも使っている煙草の道具が入っていた。女性から、「それは弟のものなので、ちゃんと 同じ所に戻しておいてくれないと、叱られてしまうから」と注意される。弟という人は、自分の習慣を邪魔されると、とても機嫌を損ねるそうだ。先の後輩の男の子もいて一緒に探してくれるが、見つからない。

そこで目が覚めたが、夢との間にいるような感覚。しかし枕元には、実際に夢で探していた自分のスマートフォンがあるのを見て、「あった!よかった」とほっとする。そして、すぐに一緒にさがしてくれた彼らに知らせて御礼を言わなくては、と現実のように思う。たぶん、そのまままた眠った。お礼を言えたかどうかわからない。


夢解き

Hさんにとってスマートフォンは、「なくてはとても困るもの」「スケジュール管理やデータのやり取り、様々な記録、地図や音楽、メモ等、自分の代わりに記憶をしてもらっているようなもの」だそうです。

彼は、職業柄かなりスマートフォンやタブレット端末を活用している 、この手のものにとても強い方です。それだけに、「少し大げさかもしれないけれど、自分の公私共のデータも含めて、頭脳をコピーしている分身のようなもの」とおっしゃいます。

その「スマートフォンのカバー」=自分のカバー=「外の世界に向けた顔やイメージ」 といえるでしょう。カバーは、デザイン性などで自分の個性を示すものであり、さらに本体をショックから守るものであることから、より「自分へのダメージを避けるための個性にみせた鎧」のようなものかもしれません。

Hさんはそれを「変えよう」としました。けれどそれを外してしまうと、本体である自分自身もなくなってしまうような気がしているので、本体も見失います。

しかしそれは自分の体から鳴っています。したがって、本当は、外に向けた顔も、本来の自分も、自身の中にあり、既に一体化しているのだから、自分をどう打ち出そうか、或は、どう守ろうかと悩む必要はないようです。

けれど、それを阻んでいるのは、夢の中には姿としては出てはきませんでしたが、「弟」の存在なのかもしれません。 

「自分の習慣や一度設定した物事を邪魔されると、とても機嫌を損ねる傾向」は、Hさん自身のものだそうです。それは不意の出来事に驚いてしまったり、怖いから抵抗したい反応であることにも、Hさんは気づいています。

この傾向の強まりは、Hさんが「学生服を着ている頃」に経験した生活上の変化などによる影響もありました。

その後、Hさんが夢に出てきた「後輩男性の年頃」になると、今度は、神経質なことが格好悪いと感じ、逆に 何事をも「どうでもいい」「面倒くさい」という鎧まとうことで超えたこともあったそうです。しかし Hさんはすでに、面倒くさがる自分と対話することができます。動いてくれるように説得もで きます。

また「お姉さん」は女性ですが、Hさんの側面です。非常に繊細で、女性的な神経のこまやかさや、創造性を表しているようです。そして男性性特有の「秩序を守ること」や「それから外れるものは切断する」ような白黒つけた厳しさではなく、中庸を図ったり、曖昧だったり流動的なものも、そのまま包含する母性的な面を担当しているようです。

彼女は、時々顔を出す「弟」の癇癪を、 なだめてくれる、Hさんの中に生きる人物なのかもしれません。

これは、Hさんの中の様々な側面が人の形となり登場し、Hさんに協力をしてくれている夢といえそうです。

多重人格という症状があります。もちろん、Hさんは異なりますが、「主になる人格」が「夢の中のHさん本人」であり、それぞれの人格が独立しているように感じられたので、夢うつつの時に本当に「報告をしたかった」そうですから、形は似ていたのかもしれません。

そして、恐らくHさんが得た「新しいカバー」を付けた本体=「彼自身」は、彼の中の皆が、ともに模索して探してくれたものであり、Hさんにとっては心強いものであり、嬉しいことだったのでしょう。したがって、今後は問題行動の要因になりうる「弟」をフォローすることも案外簡単なのかもしれません。

最後に余談ですが、昔はスマートフォンはもちろん、携帯電話もありませんでしたね。夢解きも、せいぜい「電話」であればこんな意味合いがある、という程度です。正直なところ、今回の夢の象徴は「新しい!けれど普遍的!」と何だかうきうきしました。

夢解きの歴史は長く、その時々で、それへの解釈が生まれてきたことでしょう。けれどどんな時も、まずは自分にとって、それが何を意味するのか、を考えれば、夢辞典に出ていないようなものでも、解きほぐせます。

オリジナルを大切にして、自分の夢辞典をつくりながら、夢との付き合いを楽しんでください。